8月25日(後編)
衣装を持ち、席に着くと和子が声をかけてきた。

「紗良、絶対似合うよ」

「そう、かな…何かドキドキしてきた」

「あ、そうそう!紗良に化粧してあげようと思ってたんだ!ちょっとトイレ行くよ」


と腕を掴まれるとトイレへと連れてこられた。


「もう慧くんは関係ないから、がっつり化粧してみていい?」

「え、がっつり?」

「お願いっ!紗良に化粧してみたかったの」


手を合わせ目を瞑る和子に渋々承諾する。

がっつりってのがイマイチわからないけど…大丈夫だよね?


「わたしね、美容関係の仕事に就くのが夢なんだよね〜」

化粧をしながらそう言った和子は、眩しいくらいキラキラして見えた。


和子にもちゃんと夢があるんだな〜。

夢があるってすごいことだよね。

わたしなんて考えたこともなかった。


「ん〜がっつりって言ったけど、やっぱりそこまでしなくても良さそうだね!完成っ」

体をクルッと回され、鏡のほうに向けられる。
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