8月25日(後編)
「紗良ちゃんはなんにもわかってないんだね」

そう言うと掴んだ腕を離された。

「俺、紗良ちゃんに優しくした覚えなんてないんだけど?誘いたい子をただ誘いに来ただけで」


え、誘いたい子を誘いに来た?

それって…わたしのこと?

今のはそう捉えてもいいんだよね?


「あ、だけど…その格好は着替えてくれると助かる、かな」

と苦笑いの水樹くんにまた傷つく。


水樹くんはお世辞を言ってくれないんだね。

期待しないと決めたはずの心は、いつの間にか勝手に期待していて、そして勝手に傷つくから困る。


「…着替えてきます」

と言い残し、その場を離れてやっと息ができた気がした。


なのにいつまで経っても苦しいのはどうして?

こんなんで水樹くんと回れるのかな?

また傷つくんじゃない?…
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