8月25日(後編)
見惚れてしまうのはわたしだけじゃないはずだ。

その証拠に周りの女子の視線は水樹くんに釘付け。


「紗良ちゃん何食べたい?」

と笑顔を向けられたけど、咄嗟に俯いた。

その不意打ちは心臓に悪い。


「ちょっと休憩しよっか。疲れたよね」

きっと、これは水樹くんの気遣い。

わたしのこの態度に違和感を感じているんだろう。


人ごみを避けようと少し歩いたところで声をかけられた。

「慧!」

見ると甚平姿の平野くんたちだった。


水樹くんはすぐにみんなと話し込んでしまったけど、心を落ち着かせられる時間ができてホッとしていた。


「ヤッホ、夏目さん」

と声をかけてきた平野くんと目が合う。
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