8月25日(後編)
ーー数日後…


遅い…ほんとに遅い。

もうかれこれ1時間近くは待っている。


腕時計から視線をあげた時「紗良っ」と待ち侘びた声に振り返る。


「ケビン!もう~遅いよ~」

「ごめん!会議が長引いて…ほんとごめん」

と頭を下げるケビンと会うのは久しぶり。


そんなケビンを呼びつけたのはわたしだ。

この前のお礼も言えてなかったし、ここのところケビンと会うこともできてなかった。

企画案の許可が出て、通常通りの仕事に戻り、わたし自身も余裕が出てきたこともあり、今日ケビンを誘った。


まぁ、ケビンは忙しいみたいだけど。


「ケビン……とりあえず、どっか入ろ?寒いし」

「じゃ、いつものところ行こっか」

ケビンはそう言うと歩き出す。


その背中を追うこと数分、もうケビンとの行きつけになりつつある居酒屋に着いた。

暖簾をくぐり、座るテーブルもほぼ毎回同じ。


ビールを注文して届くまでの間に口を開いた。

「ケビン、この前はありがとう」


そうお礼を口にすると、ケビンは驚いた表情を見せた。
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