8月25日(後編)
ーー数日後…


「紗良、大丈夫?最近元気ないようだけど」

今日から2泊3日の社員旅行。


今は機内で、隣に座る南からの視線がやけに痛い。


「もしかしてまだ悩んでるの?慧のこと」

南には一通り話していた。

だから、慧くんと会うべきなのか悩んでいることも知っている。


「何でそこまで悩む必要があるの?」

「…それは…」

「好きなんでしょ?答えなんてもう出てるじゃん」

まぁ、そう言われればそうなのかもしれないけど…


この6年という月日に、どうしても引っ掛かりを感じる。

どう接していいのかもわからないし、あの頃と何も変わっていないわたしを知られるのが何より怖い。

高校生っていう若さに任せて、あの頃は勢いで突っ走ることができたけど、今はそうはいかない。


「好きなのに、何で指輪受け取らなかったの?」


と向けられた視線から思わずそらしてしまう。

あの居酒屋で、平野くんから渡された指輪は、いつの間にか慧くんが持ち帰ったようで…

気づいた時にはなくなっていた。
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