8月25日(後編)
「そんなに深く考えなくてもいいんじゃない?」

そう言って窓の外を見る南。

「指輪を渡すってそういうことじゃん?向こうに行っても、紗良のことずっと忘れられなかったんだよ」

「でも、連絡一つくれなかったんだよ?」


ずっと思ってくれていたんなら……

連絡の一つや二つ…欲しかった。


「そんなに連絡欲しかったんなら、紗良から送ることだってできたはずだよ?」

「っ……」

確かにそうだ。


思えばいつだって、わたしから送ることはできたんだよね。


それを返事がこなかったら、とか…

慧くんから逃げていたのはわたしのほう。


慧くんへの気持ちを押し殺して、ちょっとでも楽しようとしていた。

そうすることで、前に進めると思っていたから。

だけど、何も変わらなかった。


変わらないどころか、気づくと気持ちは膨らんでいってた。


考えないようにしようとすればするほど、頭の中も心の中も慧くんでいっぱいだった。

自分の気持ちに正直になれば…


また、慧くんと会えたことはかなり嬉しかった。
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