8月25日(後編)
そう言ってくれた南に笑顔に向け「ありがとう」とお礼を口にした。


急いで会社を出ると、とりあえず気持ちを落ち着かせる。

ここ最近で一番と言っていいほど、今のわたしの気持ちは高鳴っていた。

あんなに会いたくて、大好きだった慧くんと会う…

それを考えると夜も眠れなかった。

朝起きてクマができたいたのはここだけの秘密。

それもお化粧でうまく誤魔化すことができたわたしは、お化粧の腕をあげたに違いない。


18時55分…

ギリギリで着けたことに安堵する。

と同時に指定された駅前に懐かしさを感じていた。

この駅は高校の最寄駅。

と言っても、電車通学じゃなかったから深い思い出があるわけではないけど、この駅前を通って帰っていたことは確かだ。


「紗良ちゃん、」

懐かしさに浸っていると、慧くんの声が耳に届きドキッとする。

ゆっくり振り返るとスーツ姿の慧くんが立っていた。

「ごめん、もしかして待った?」

「ううん!わたしも今来たところ」

と案外にも普通に話せていることに驚き。


ここに来るまでの間、緊張のあまりうまく話せなかったら…と心配していたけど、心配するだけ無駄だったみたい。
< 486 / 499 >

この作品をシェア

pagetop