8月25日(後編)
「向こうに残って仕事を探すことも考えたりしたけど、気づいたら日本に帰ってきてた」

そう言うと瞳を重ねてきた慧くん。

相変わらず慧くんの瞳には吸い込まれそうになるから困る。

「気づいたら、なんてのは嘘。こっちに帰ってきたのは俺の意思……紗良ちゃんに会いたくて帰ってきた」

「っ…」

そう言った慧くんから視線をそらし、ビールを口に運ぶ。

今のわたし、どんな顔してるんだろう?

慧くんにどう映ってるのかな?


「帰って来て、紗良ちゃんに会うのは今日で3回目なんだ」

「え?…」

3回目…?

2回目じゃなくて?

でも、わたしの記憶だと2回目のはずなんだけど…?

頭の中にハテナが浮かんでいく。

「実は前に一度、紗良ちゃんのアパートを訪ねたことがあって…その時、タクシーの中で眠る紗良ちゃんを部屋まで運んだことがあった」

…っ…!!

うそ…!?

あれ、慧くんだったの?

てっきりケビンだと…。

あ、だからあの時のケビンの反応おかしかったんだ。
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