8月25日(後編)
ケビンなりに空気を呼んでくれてたんだね。

「こんなこと言ったらドン引きされるかもしれないけど、向こう行ってる間もずっと紗良ちゃんのこと想ってた」

真っ直ぐわたしの目を見てそう言った慧くん。

「向こうの生活はそれなりに充実してたけど、いつも心に穴が空いてて…それを埋めてくれるのは紗良ちゃんだと思ってた」

「…慧くん…」

「20歳の誕生日の時に一度こっちに帰って来てて、紗良ちゃんに会いに行くつもりだった。でも、紗良ちゃんの隣には知らない男がいて……俺の行動は身勝手かな、って…」

知らない男…?

あ、もしかしてそれって…合コンで出会った人かもしれない。


20歳前後で思いつく人物はその人以外いない。

そっか…慧くんに見られてたんだ?

「向こうに戻って、何度も紗良ちゃんのことは諦めようとしたけど…無理だった」

俯きながらそう言った慧くんに同じ感情を抱いていたことを知る。


わたしも何度も慧くんの存在を消そうとした。

だから、慧くんの気持ちが痛いくらい伝わる。

「あ、それで俺の仕事なんだけど、今は国際弁護士してるんだ。だいぶ話しそれたけど」

とドラマなどでよく見る弁護士のバッチ?のようなものを見せられた。
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