8月25日(後編)
そこは…

「ここ…」

目の前の建物を見つめる。

「懐かしいでしょ?」

「うん。だって卒業した以来、一度も来てなかったから」


慧くんが連れて来てくれたのは、人生で一番と言っていいほど思い出深い場所…

学校だった。

ここで慧くんと出会い、全てが始まったことを思い出す。


「和田先生覚えてる?」

そう尋ねてきた慧くんに「もちろんだよ」と返事をすると、ふんわり微笑み言葉を続けた。

「この前偶然会ってさ、特別に許可を得たからちょっと入らない?」

「え…今から?」

「そう、今から」

なんの迷いもなくそう答えた慧くんに困惑する。

だって、今からって…


校舎は見るからに真っ暗なんだよ?

大丈夫なのかな?

ここ数年は出てないけど、暗所恐怖症の症状が出ないかと不安になる。

すると、そんなわたしの不安を読み取るかのように手を握られた。
< 492 / 499 >

この作品をシェア

pagetop