8月25日(後編)
「大丈夫。俺が一緒にいるから」

「っ……わかった」

そんなこと言われたら断れないよ。


だけど正直な気持ち、久しぶりの校舎に入って、あの頃の記憶を思い浮かべたいと思っていた。

だから、慧くんが手を握ってくれなくてもわたしの返事は決まっていた。

「下駄箱とかあの頃のままだね」

昇降口を入ってすぐに見えた懐かしい下駄箱。

慧くんが言うように、あの頃のままだ。


ほんとに懐かしい…

まるで学生に戻ったかのような錯覚を起こす。

「そういえば逞に下駄箱の扉ぶつけられたこともあったよね」

と笑う慧くんはひどい。

あれはなかなかに痛かったんだからね。

「傷残らなくてよかったね?」

「腫れて終わりだったから」

「結構腫れてたみたいだから、あの時は心配したんだよ?」

「うん、知ってる。それも平野くんから聞いてた」

慧くんのことは平野くんから筒抜けだったもんね。


それは今もだけど、そう思うと平野くんの存在はかなり大きかったな〜…なんて。
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