8月25日(後編)
下駄箱を抜け、そのまま向かったのは1年の頃の教室。

電気を点けるなり、変わっていない教室内に笑みがこぼれる。


「あ、机…新しくなってる」

そう言った慧くんから視線を机に向けると、確かに新調されたようだ。

まぁ、それもそうだよね。

わたしたちが使ってた時でもだいぶ年季が入っていたから。

「ね、紗良ちゃんそこに座って」

と指定された席は、もちろんあの頃に座っていた席。


素直に席に座ると、斜め前の席に慧くんも腰をおろした。

そんな慧くんの背中を見つめる。

あの頃もこうやって、よく慧くんの背中を見つめてたっけ…?

下ばっかり見ていたけど、いつからか慧くんの背中を見るようになっていた。


「懐かしいな〜…」

前を向いたまま、そう呟いた慧くんに同感。

1日でいいからあの頃に戻ってみんなと過ごしたい。

「俺の中で高1の思い出が一番濃いんだよね。紗良ちゃんとこの教室で過ごした思い出が」

あの頃の記憶を思い出しているのか、どこか遠くを見つめながらそう言った慧くん。
< 494 / 499 >

この作品をシェア

pagetop