8月25日(後編)
「それはわたしも同じ。思い出を振り返ると、やっぱりここで過ごした1年がすぐに浮かぶ」

「それは俺がいたから?」

と振り返りながら質問される。

「…慧くんの存在は誰よりも大きいよ」

それはこれからも変わらないと思う。


「そっか。それは嬉しいな〜」

本気で嬉しそうに笑うから、こっちが照れてしまう。

でも、慧くんのそういうところ…

変わってなくて安心する。

「紗良ちゃん、」

と立ち上がった慧くんと目が合うと、再び手を握られた。

「俺、もう一箇所だけ行きたいところあるんだ」

「え、どこ?」

「2人が出会ったあの場所」

と手を引かれ、連れて行かれる場所をなんとなく想像する。


わたしの中で慧くんとの思い出の場所は2つある。

きっと、そのどちらかに向かっているはず。


そのまま大人しく連れて来られた場所は…

「やっぱりここだった」

もう一つの場所と迷ったけど、慧くんと初めて出会った場所のほうだと思っていた。
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