8月25日(後編)
「ここで紗良ちゃんの生徒手帳拾ったんだよね」

体育館へ続く渡り廊下の真ん中…

ここから何もかも始まった。

あの時に感じた感情は今でもハッキリ覚えている。


「ね、紗良ちゃん…」

夜風と一緒に届いた慧くんの落ち着いた声に顔をあげると、あの時と同じ瞳を向けられていた。

「結婚しよ?」

「……えっ…!?」

け、結婚!?!?

これって…プロポーズ…!?

「俺の気持ちはもうずっと紗良ちゃんだけに向いてて…それはこれからも変わらない。だから、俺と結婚してほしい」


そう言い終えると、ポケットから見覚えのある小さな箱を取り出した。

その箱をゆっくり開き中身を取り出すと、そのまま左手の薬指に。

「…綺麗…っ」

街灯に照らされ、キラキラと光るダイヤモンドに思わず見入ってしまう。

それにしてもこの指輪…

サイズがピッタリすぎる。


「返事は急がないから…ゆっくり決めてくれていいからね」
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