8月25日(後編)
優しく微笑む慧くんに胸が熱くなる。

わたしは慧くんのその笑った顔がずっと好きだった。

その笑顔を見ると、いつも安心できていた。

どうやらそれは今も変わらないみたい。


「そろそろ帰ろっか」

と歩き出す慧くんを呼び止めた。

「慧くん、」

返事なんて、もうとっくに決まっている。

わたしだってこれから先、慧くんを想う気持ちが変わることはない。

そう断言できる。

「さっきの返事…今してもいいかな?」

「え?…あ、うん」

少し拍子抜けしたようだ。


もうこの気持ちを我慢したくない。


「わたしも…これからは水樹紗良って名乗りたい。今思えば、それが夢だった気がする。だから……よろしくお願いしますっ」

深く頭を下げると、勢いよく抱きしめられた。

慧くんの腕の中…やっぱり落ち着く。

目を瞑りそっと耳を澄ますと、慧くんの鼓動が聞こえてきた。


今の鼓動は少しだけ早い気がする。
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