それは夕立とともに
ジンクスの結果を得ること。
「そういえば栞里ちゃん、今日古典って言ってたっけ?」
沈黙が嫌で彼女が答えてくれそうな質問を投げてみた。
「あ、うん。そうだよ。ちゃんとテキストやった?」
宿題の確認も予想済みで、俺は愛想よく笑ってみせた。
「ごめん、忘れてた〜」
彼女は目を細め、お決まりの呆れ顔だ。
「キミ、先週も宿題忘れたでしょ? いい加減真面目にやらなきゃ」
「だって、国語苦手なんだもん」
「苦手だから私が家庭教師やってるんでしょ?」
「そーだけどさぁ……。一人だとやる気出ないんだよね〜。やっぱ栞里ちゃんが教えてくれないと」
「なに言ってるの、定期テストは一人で受けるんだし、来年は受験もあるし。いい加減本腰入れないと!」
言うことが学校の教師と相違ない。このまま延々とお説教されるのも嫌で、唇を尖らせ、ちぇっ、と拗ねてみせた。
また沈黙が降りてくる。
狭い密室に、微かに甘い匂いが漂ってきた。嗅覚とともについ先日の記憶が蘇る。
「そういえばさぁ」
「……今度はなに?」
栞里ちゃんは少し嫌そうな顔をする。俺は構わずに続けた。