桔梗の花咲く庭
第16章
第1話
ずぶ濡れのまま家に戻ったら、心配したお義母さまと家の者たちが飛び出してきた。
「まぁ、志乃さん、一体どこまで行ってたのよ!」
手ぬぐいを受け取る。
体を拭きながら、その人が代わりに答えた。
「少し寄り道をしていたら、すっかり遅くなってしまったのです」
お義母さまはそれでもまだブツブツと言っていたけれど、とにかく濡れた体をどうにかする方が先だ。
抱えていた風呂敷を差し出す。
「お土産です」
ぐっしょりと濡れたそれを受け取った義母は、盛大なため息をついた。
「ま、別にいいんですけどね。二人とも無事に帰ってさえ来てくれれば……」
義母は風呂敷を広げた。
「お義母さまとお祖母さまと、私にも同じ化粧用の油紙を。お父さまと晋太郎さんには、根付を買って参りました」
家の者にと買ってきた飴玉は、濡れて台無しになってはいないかしら。
「志乃さんは、今日はこのために出かけていたのですか?」
義母にそう言われ、言葉に詰まる。
晋太郎さんが不機嫌に声を荒げた。
「先に着替えさせてください。風邪を引きます!」
風呂を沸かすかと聞かれたが、もう遅いので断る。
湯に浸した手ぬぐいで体を拭き、湯たんぽを出してもらった。
簡単な食事を済ませてから、早々に床につく。
お義母さまの指示で用意された寝所に、もう衝立はなかった。
「寒くはないですか?」
「大丈夫です」
このまま寝ろと言われても、全然落ち着かない。
晋太郎さんも落ち着かないのか、かけ布団をめくっただけで手をとめた。
ついさっきまでの出来事がまだ頭の中にこびりついていて、何よりもすぐ横にこの人がいるということが一番の問題なのだ。
もぞもぞとしていたら、その人は口を開いた。
「まぁ、志乃さん、一体どこまで行ってたのよ!」
手ぬぐいを受け取る。
体を拭きながら、その人が代わりに答えた。
「少し寄り道をしていたら、すっかり遅くなってしまったのです」
お義母さまはそれでもまだブツブツと言っていたけれど、とにかく濡れた体をどうにかする方が先だ。
抱えていた風呂敷を差し出す。
「お土産です」
ぐっしょりと濡れたそれを受け取った義母は、盛大なため息をついた。
「ま、別にいいんですけどね。二人とも無事に帰ってさえ来てくれれば……」
義母は風呂敷を広げた。
「お義母さまとお祖母さまと、私にも同じ化粧用の油紙を。お父さまと晋太郎さんには、根付を買って参りました」
家の者にと買ってきた飴玉は、濡れて台無しになってはいないかしら。
「志乃さんは、今日はこのために出かけていたのですか?」
義母にそう言われ、言葉に詰まる。
晋太郎さんが不機嫌に声を荒げた。
「先に着替えさせてください。風邪を引きます!」
風呂を沸かすかと聞かれたが、もう遅いので断る。
湯に浸した手ぬぐいで体を拭き、湯たんぽを出してもらった。
簡単な食事を済ませてから、早々に床につく。
お義母さまの指示で用意された寝所に、もう衝立はなかった。
「寒くはないですか?」
「大丈夫です」
このまま寝ろと言われても、全然落ち着かない。
晋太郎さんも落ち着かないのか、かけ布団をめくっただけで手をとめた。
ついさっきまでの出来事がまだ頭の中にこびりついていて、何よりもすぐ横にこの人がいるということが一番の問題なのだ。
もぞもぞとしていたら、その人は口を開いた。