「好き」にも TPOが必要
「ねぇ、今日はどう?」「……今日も、かっこいいですよ」
この奇妙なやりとりは、授業で習ったどんな化学反応よりも衝撃的なあの出来事から、ずっと続いている。
わざわざ隣に来て聞いてくる癖に、絶対に顔を逸らして口元を覆う先生に、今までの〝なんとなく好きな気がする〟なんて曖昧な想いが、はっきりとした形へ変わるのはもはや必然で。
日を追うごとに胸に渦巻くそれは、甘さ以外にも、痛みまで与えるようになる。気づかないようにするだけでも大変なのに、私の中に潜むもう一つの感情が暴走して『もっと先生が喜ぶ褒め方』を探しだす。
気づかせるのは本能で、見て見ぬふりするのは理性。あいにく、高校生の身である私にはどちらがより強いかなどわかりきっていた。
ただ褒めているだけ。茶化す周囲に言い訳をしながらも、一番は自分自身に言い聞かせる。大人であり、立場があり、決して超えてはいけない線がある先生に迷惑はかけたくなかった。
……だというのに、生徒の苦労も知らぬまま聞かれた質問。息が止まって、頭が真っ白になった。
「なに、白崎って俺のこと好きなの?」
この奇妙なやりとりは、授業で習ったどんな化学反応よりも衝撃的なあの出来事から、ずっと続いている。
わざわざ隣に来て聞いてくる癖に、絶対に顔を逸らして口元を覆う先生に、今までの〝なんとなく好きな気がする〟なんて曖昧な想いが、はっきりとした形へ変わるのはもはや必然で。
日を追うごとに胸に渦巻くそれは、甘さ以外にも、痛みまで与えるようになる。気づかないようにするだけでも大変なのに、私の中に潜むもう一つの感情が暴走して『もっと先生が喜ぶ褒め方』を探しだす。
気づかせるのは本能で、見て見ぬふりするのは理性。あいにく、高校生の身である私にはどちらがより強いかなどわかりきっていた。
ただ褒めているだけ。茶化す周囲に言い訳をしながらも、一番は自分自身に言い聞かせる。大人であり、立場があり、決して超えてはいけない線がある先生に迷惑はかけたくなかった。
……だというのに、生徒の苦労も知らぬまま聞かれた質問。息が止まって、頭が真っ白になった。
「なに、白崎って俺のこと好きなの?」