「好き」にも TPOが必要
友人との話に花を咲かせつつ、階段を登る。聞き慣れた声の主からの挨拶に、反射のように「かっこいいですね、」と返事をした。まだ予鈴まで余裕があるけれど、足は立ち止まることなく次の教室へ向かう。
「……なんかあったの?」あまり先生のことは話していなかった人でも、違和感を覚えたのか心配そうな声色で聞かれる。「なんでもないよ」「そう? なら、いいけど」どこか納得していない表情も、次の話題に切り替えればすぐに消えた。
そう、なんでもない。さらりと浅くなぞるだけの好意が、生徒として正しい感情のはずだった。
不適切な想いは、いらない。
淡々と過ぎていく日々。世界の色彩が少しくすんだ気がする。センチメンタルでめんどくさい女だと自覚しながらも、何も予定のない連休を過ごした。
たったの四日で崩れた生活リズムに、連休あけの学校は地獄だろうな、と月並みな心配をする。
「これ、理科室に持っていってくれる? お願いね」
先の心配事はなんだかんだ当日の自分がどうにかすることがほとんどで、例に漏れず私もそうだった。怠く重い身体を引きずりつつも登校し、いつの間にか下校時刻。いま、気がかりはHRで担任から頼まれたノート提出だけ。
——正直、一番行きたくない場所だった。感情の整理も、何もかもできていなくて不在であることを願うばかり。ただ、こういうときに限って最悪を引き当てるもので。
「……なんかあったの?」あまり先生のことは話していなかった人でも、違和感を覚えたのか心配そうな声色で聞かれる。「なんでもないよ」「そう? なら、いいけど」どこか納得していない表情も、次の話題に切り替えればすぐに消えた。
そう、なんでもない。さらりと浅くなぞるだけの好意が、生徒として正しい感情のはずだった。
不適切な想いは、いらない。
淡々と過ぎていく日々。世界の色彩が少しくすんだ気がする。センチメンタルでめんどくさい女だと自覚しながらも、何も予定のない連休を過ごした。
たったの四日で崩れた生活リズムに、連休あけの学校は地獄だろうな、と月並みな心配をする。
「これ、理科室に持っていってくれる? お願いね」
先の心配事はなんだかんだ当日の自分がどうにかすることがほとんどで、例に漏れず私もそうだった。怠く重い身体を引きずりつつも登校し、いつの間にか下校時刻。いま、気がかりはHRで担任から頼まれたノート提出だけ。
——正直、一番行きたくない場所だった。感情の整理も、何もかもできていなくて不在であることを願うばかり。ただ、こういうときに限って最悪を引き当てるもので。