「好き」にも TPOが必要
「生徒として、じゃなくて白崎を心配してるんだけど」
 私の言葉をそのまま反復され、強く否定される。そんな答えは予測していなくて、溢れそうだった目頭の熱が、限界を迎えた。

「……白崎は、俺のこと教師としか思ってない?」「なんで、そんなこと聞くんですか」
空気が、痛い。「責められるのは、先生じゃないですか、」とめどなく流れる涙が、ただでさえ苦しい胸を締め付けた。

「YesかNoで答えて」「俺のこと、好き?」 

 散々、醜態を晒して叶わないのだと伝えたはずなのに、はっきりと目を合わせて聞かれる。もう、こんなに辛いのは嫌で、断ってくれれば楽なのかもしれないと、頷いた。

「心配しなくていいよ、あとは俺がどうにかする」
 水滴で焦点が合わない。意識もここじゃないどこかへ飛んだまま、よくわからない返事をした。
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