京都、嵐山旅館の若旦那は記憶喪失彼女を溺愛したい。
拾われる
朝6時の風はまだ肌寒く、外に出た松尾純一(マツオ ジュンイチ)は早く体を温めるために片手に持っていた箒を両手に握り直して軒先を掃除しはじめた。
冷えた空気の中に箒の音が大きく聞こえ、少し遠くで鳥のさえずりが聞こえてきた。
ザッザッと心地よい音を響かせながら掃き掃除をする純一の後方に見えている建物は、松尾旅館と大きな看板が屋根に掲げられた旅館だった。
その隣には右隣にも左隣にも別の旅館が並んでいて、少し歩けばお土産物街や観光地が所狭しと並んでいる。
そう、ここは嵐山駅のごく近くにある旅館街なのだ。
「今日はいい天気になりそうだ」
一通り掃き掃除を終えた純一は青い空を見上げて口角をあげ、呟く。
藍色の着物には松尾家の家紋が白く浮き出るように染められていて、それは見事な品物だとすぐにわかる。
ちりとりに集めた落ち葉を旅館の裏手にあるゴミ収集場所へと持っていこうと、旅館の側面へ回る。
旅館と旅館の隙間にある細い道を歩き始めたとき、薄暗い道になにかがうずくまっているのが見えて純一は息を飲んで足を止めた。
ジッと黒い物体を見つめてもそれは動かない。
建物と建物に挟まれた路地は陽の光も遮られて、それがなんであるのか遠目から確認することも困難だった。
冷えた空気の中に箒の音が大きく聞こえ、少し遠くで鳥のさえずりが聞こえてきた。
ザッザッと心地よい音を響かせながら掃き掃除をする純一の後方に見えている建物は、松尾旅館と大きな看板が屋根に掲げられた旅館だった。
その隣には右隣にも左隣にも別の旅館が並んでいて、少し歩けばお土産物街や観光地が所狭しと並んでいる。
そう、ここは嵐山駅のごく近くにある旅館街なのだ。
「今日はいい天気になりそうだ」
一通り掃き掃除を終えた純一は青い空を見上げて口角をあげ、呟く。
藍色の着物には松尾家の家紋が白く浮き出るように染められていて、それは見事な品物だとすぐにわかる。
ちりとりに集めた落ち葉を旅館の裏手にあるゴミ収集場所へと持っていこうと、旅館の側面へ回る。
旅館と旅館の隙間にある細い道を歩き始めたとき、薄暗い道になにかがうずくまっているのが見えて純一は息を飲んで足を止めた。
ジッと黒い物体を見つめてもそれは動かない。
建物と建物に挟まれた路地は陽の光も遮られて、それがなんであるのか遠目から確認することも困難だった。
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