京都、嵐山旅館の若旦那は記憶喪失彼女を溺愛したい。
時々言葉を濁してごまかそうとしても、それは皐月が許してくれなかった。
傷心旅行のような無謀なことをしでかして酔っ払って、行き倒れた顛末を洗いざらい話される。
話を聞き始めて最初の時は深刻な表情をしていた純一だったが、下車してお酒を飲んだあたりから徐々にその表情が変化しはじめ、最後には呆れた顔になっていた。
純一の隣の皐月も同じようなもので、振られた経緯やセクハラ上司の話のときには『とんでもない男だ』とか『上司失格ね』など言っていたのに、最後には大爆笑されていた。
「なるほど、そういうことでしたか」
すべて話し終えて春菜は大きく息を吐き出した。
顔が熱くて真っ赤になっていることがわかる。
「とにかく、記憶が戻ってよかったよね。このまま何者かわからないんじゃ困るからさ」
ようやく笑いが収まった皐月が言う。
それでもまた笑い出しそうになっているので、よほど面白い話しだったみたいだ。
「はい……」
春菜としてはこんな恥ずかしい過去を思い出してしまったのは微妙なところだ。
できればずっと忘れていたかった。
春菜の記憶は戻った。
さてこれからどうしようかと思った時、ノックが聞こえてヒロミが襖をあけた。
傷心旅行のような無謀なことをしでかして酔っ払って、行き倒れた顛末を洗いざらい話される。
話を聞き始めて最初の時は深刻な表情をしていた純一だったが、下車してお酒を飲んだあたりから徐々にその表情が変化しはじめ、最後には呆れた顔になっていた。
純一の隣の皐月も同じようなもので、振られた経緯やセクハラ上司の話のときには『とんでもない男だ』とか『上司失格ね』など言っていたのに、最後には大爆笑されていた。
「なるほど、そういうことでしたか」
すべて話し終えて春菜は大きく息を吐き出した。
顔が熱くて真っ赤になっていることがわかる。
「とにかく、記憶が戻ってよかったよね。このまま何者かわからないんじゃ困るからさ」
ようやく笑いが収まった皐月が言う。
それでもまた笑い出しそうになっているので、よほど面白い話しだったみたいだ。
「はい……」
春菜としてはこんな恥ずかしい過去を思い出してしまったのは微妙なところだ。
できればずっと忘れていたかった。
春菜の記憶は戻った。
さてこれからどうしようかと思った時、ノックが聞こえてヒロミが襖をあけた。