京都、嵐山旅館の若旦那は記憶喪失彼女を溺愛したい。
なんだ。


子供の頃の話しなら、先にそう言っておいてほしかった。


『だけどその人は僕を置いて行ってしまいました』


『皐月さんのことではないんですね?』


ずっと考えていたことを口に出して聞いてみた。


皐月と純一は幼馴染で今でもとても仲がいい。


2人を見ていると昔なにかあったのではないかと、誰でも感じるだろう。


しかし純一はキョトンとした表情になって『どうして今皐月が出てくるんですか?』と、首をかしげた。


『いえ、話の腰を折ってすみませんでした。続けてください』


『はい。将来結婚しようと約束したその子は小学校高学年になると転校していってしまったんです。手紙を書くと言っていたのに、結局一通もきませんでした』
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