京都、嵐山旅館の若旦那は記憶喪失彼女を溺愛したい。
☆☆☆
春菜と純一が婚約発表を行った1年後、松尾旅館は貸し切りとなっていた。
「純一のヤツ、小学校時代の恋からようやく立ち直ったんだな」
黒いスーツで白いネクタイを閉めた飯田医師が窮屈そうに首元を緩めながら言った。
「そうね。それもこれも春菜ちゃんのおかげよねぇ」
吉田旅館の家紋が入った赤と金の豪華な着物を着た皐月が答える。
皐月の右隣りには同じ家紋の入った黒い着物を着る皐月の夫。
更にその横には皐月によく似た男の子がチョコンと座る。
「で? 春菜ちゃんの元彼の黒田ってヤツは来てないのか?」
黒田のことは話しでしか聞いたことのない飯田医師が、周囲を見回して言う。
「来るわけないでしょ。呼んでもないと思うけど」
「ちぇっ。今回は俺だけ蚊帳の外だったからなぁ。春菜ちゃんと純一がそろって診療所へ来たと思ったら、記憶が戻りましたぁなんて報告するもんだからビックリしたよ」
「でも良かったじゃない。あのまま春菜ちゃんの記憶が戻らなかったら、こんな日も来なかったんだから」
松尾旅館の入口には『松尾家結婚式場』と書かれた看板が出されていた。
春菜と純一が婚約発表を行った1年後、松尾旅館は貸し切りとなっていた。
「純一のヤツ、小学校時代の恋からようやく立ち直ったんだな」
黒いスーツで白いネクタイを閉めた飯田医師が窮屈そうに首元を緩めながら言った。
「そうね。それもこれも春菜ちゃんのおかげよねぇ」
吉田旅館の家紋が入った赤と金の豪華な着物を着た皐月が答える。
皐月の右隣りには同じ家紋の入った黒い着物を着る皐月の夫。
更にその横には皐月によく似た男の子がチョコンと座る。
「で? 春菜ちゃんの元彼の黒田ってヤツは来てないのか?」
黒田のことは話しでしか聞いたことのない飯田医師が、周囲を見回して言う。
「来るわけないでしょ。呼んでもないと思うけど」
「ちぇっ。今回は俺だけ蚊帳の外だったからなぁ。春菜ちゃんと純一がそろって診療所へ来たと思ったら、記憶が戻りましたぁなんて報告するもんだからビックリしたよ」
「でも良かったじゃない。あのまま春菜ちゃんの記憶が戻らなかったら、こんな日も来なかったんだから」
松尾旅館の入口には『松尾家結婚式場』と書かれた看板が出されていた。