京都、嵐山旅館の若旦那は記憶喪失彼女を溺愛したい。
「私、ちゃんと働けるかどうかわかりませんよ?」


なにせ自分の名前も思い出せない状態なのだ。


そんな中新しい仕事を覚えられるのかどうか不安だった。


「最初はみんな新人です。それに僕がちゃんと指導します」


「あの……どうしてそんなに優しくしてくれるんですか?」


聞いてからしまったと思った。


これじゃ純一の優しさを疑っているように聞こえてしまうかもしれない。


しかし純一は嫌な顔ひとつせずに「乗りかかった船を途中で降りるのが嫌なだけです。さ、行きますよ」と微笑んで、また歩き出したのだった。
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