京都、嵐山旅館の若旦那は記憶喪失彼女を溺愛したい。
☆☆☆

それから数日間で春菜はこの旅館の見取りをあらかた覚えていた。


部屋のランクは3つあり、1階がスタンダード。


2階がデラックス。3階がスイートに当たる。


部屋の広さや見晴らしはもちろんのこと、スイートルームになると露天風呂がついている。


お風呂の種類は4種類あり、今流行りのサウナ風呂、ラジウム風呂に炭酸風呂、それに露天だ。


ここに泊まりにきたお客さんたちはみんな好みの温泉に入って心と体を癒やして帰る。


春菜もいろいろな温泉につかってみたけれど、お気に入りは炭酸風呂だった。


「うん。怪我はもうすっかり良くなったみたいだね」


飯田の元に訪れた春菜は太鼓判を押してもらい、ホッと息を吐き出した。


ようやく純一に恩返しすることができるみたいだ。


「ありがとうございました」


「うん。でもまたちゃんと通院してね? 記憶の方も気になるから」


「はい」


終始気さくに話しかけてくる飯田にお礼を言い診察室を出ると純一が近づいてきた。


ずっと待合室で待っていてくれたのだ。
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