京都、嵐山旅館の若旦那は記憶喪失彼女を溺愛したい。
「怪我はもうよくなったみたいです」


「そうですか。それは良かった」


「これで今日からバリバリ仕事ができますね!」


春菜は力こぶを作ってそう言って見せた。


今日のために頑張って旅館の中のことを調べてきたので、やる気まんまんだ。


「それは嬉しいですが、決して無理はしないでくださいね。なにか異変があればすぐに近くにいる者に伝えてください」


深刻な表情で言う純一に春菜も頷く。


働く気満々と言っても無理をすればまた純一に迷惑をかけてしまう。


そのへんはちゃんと自分でもわかっているつもりだった。


「じゃあ、行きましょうか」


支払いを済ませて、2人は飯田診療所を後にしたのだった。
< 21 / 125 >

この作品をシェア

pagetop