京都、嵐山旅館の若旦那は記憶喪失彼女を溺愛したい。
春菜はあれほど美味しい料理を提案している村田さんに会えたことに素直に感動シて右手を差し出していた。


「いつも美味しい料理をありがとうございます! ここに来てから今日のご飯はなんだろうって毎日楽しみにしていたんです」


「それはありがとう。これからよろしくね」


村田さんは春菜の手を握り返して答える。


気難しい雰囲気もなく、柔らかく包み込んでくれる笑顔に安堵した。


職人さんといえば誰もが気難しいイメージを抱いていたけれど、そうじゃないたみだ。


「それから藤井ヒロミさんと久保美絵さん。2人共ここで働いて3年目のベテランさんだ」


「そんな純一さん。ベテランだなんて」


純一の言葉に一番に反応したのはヒロミだった。


ヒロミは丸っこい体型をしていて、帯で閉めたウエストの上には豊満なバストが膨らんで見える。


それを強調するように背を伸ばして純一に一歩近づいた。


「2人共十分よくやってくれています。なので、2人には春菜さんの教育係をお願いしたいと思っています」


「私達が教育係ですか?」


不安そうな声を漏らしたのは美絵だ。


美絵はすいぶんと細くて着物の隙間から浮き上がった鎖骨が見えている。


「そうです。春菜さんには清掃を始めとしてフロント業務もしてもらおうと思っているので2人が適任だと判断しました」


そう言われて2人は顔を見合わせ黙り込む。
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