京都、嵐山旅館の若旦那は記憶喪失彼女を溺愛したい。
２人で嵐山の街を歩いているとどこからかチャルメラの音が聞こえてきた。


「あ、近いですね」


純一はそう言うと、足早にあるき出す。


春菜もそれに続いて小走りになった。


やがて路地の向こうから提灯をぶら下げた、屋台が近づいてくるのが見えた。


純一は駆け寄ってはちまきをしている男性に声をかけ、それから振り向いて春菜においでおいでと手を振った。


「ラーメンは好きですか？」


質問しながらも純一はすでに暖簾の内側に入り、店主の男性は木の椅子を２脚準備してくれた。


「はい。たぶん好きです」


目が冷めてから色々と食べさせてもらっているが、今の所苦手だと感じる食べ物はなかった。


きっとラーメンも好きだったはずだ。


「じゃあ、ラーメンを２つ」


「あいよ！」


威勢のいい掛け声と共に店主の男性が麺を準備し始める。


黄金色の麺が茹でられてお湯の中に広がる。


その間に２つの丼には醤油ベースのスープが入れられ、分厚いチャーシューがカットされていく。


それを見ているだけでグーとお腹が鳴ってしまった。
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