京都、嵐山旅館の若旦那は記憶喪失彼女を溺愛したい。
自分のせいであの優しい純一が怒られているなんて耐えられなかった。


春菜はヒロミから純一のいる場所を聞いてすぐに向かった。


旅館の奥にある応接室の前に立つと男性の声と純一の声が漏れて聞こえてくる。


「あの従業員はどうなってるんだ」


「申し訳ございません。わたしく共の教育不足です」


「この旅館にはいつも期待していたのに、今回は期待はずれだったよ」


男性客の言葉に胸がチクリと痛む。


自分のせいでこの旅館に迷惑をかけている。


これ異常そんなことは許されなかった。


その思いから春菜はドアをノックしてそっと開いた。


中にいたのは確かに春菜が受付をした男性で間違いなかった。


名前を何度も聞いてしまった男性だ。


春菜の姿に純一は驚いたように目を見開く。


「大崎様。この度は失礼なことをしてしまい、本当に申し訳ございませんでした」


春菜は深く頭を下げる。


「君はここでどのくらい働いているんだ？」


大崎様の質問に春菜は顔を上げて純一を見た。


勤務は昨日からだ。


しかもちゃんとした従業員とは少し違う。


だけどそれを言うと言い訳に聞こえてしまって、更に怒らせてしまうことになるかもしれない。
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