京都、嵐山旅館の若旦那は記憶喪失彼女を溺愛したい。
約束の時
翌日に約束を控えた夜。


春菜は一人でお気に入りの炭酸風呂に方までつかっていた。


肌に絡みついてくる炭酸がサッパリとさせてくれて心地いい。


最近では洗顔料やパックにも炭酸系のものが出てきていて、その効能は確かなものだった。


春菜もこのお風呂に入るようになってから肌の調子がいいような気がする。


「ついに、明日かぁ……」


誰もいない湯船の中で春菜の声が響く。


明日の午後1時頃、嵐山駅の前にあるカフェで黒田と待ち合わせをしている。


考えれば緊張してしまって眠れなくなりそうなので、どうにか思考を別のところへと持っていく。


今日の仕事は久しぶりのフロントだった。


ヒロミと一緒だったけれど、特に大きなミスもなく終えることができた。


ヒロミがついた嘘についても『ごめん』とぶっきらぼうであったがちゃんと謝ってもらっていて、軽い雑談をしてみるとなんとなく気が合うような気がしていた。


このまま、ここでの仕事を続けたい。


ちゃんとした社員になってみんなに迷惑や心配をかけないようになりたい。


そのためにはまず一番に記憶を取り戻すことだ。


よしっ! と自分に気合を入れて炭酸風呂から豪快に上がった。


今日の晩ごはんはタケノコごはんでつい食べすぎてしまい、少し体が重たいと感じる。


ダイエットするべきかな。


なんて考えながら浴衣を着て出ると、ちょうと隣のラジウム風呂から純一が出てきたところだった。
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