きみの瞳に、

いつまでも触れていたい衝動に駆られるのをなんとかやり込め、俺は彼女の頬からゆっくりと手を離した。

俺が手を離したばかりの彼女の頬がほんのりと上気しているのは、気のせいでは無い、と思う。


俺を見上げる仁科さんの瞳が、ゆるゆると揺れている。


――好きだ、愛おしい。


そう口にする代わりに、俺は、飴を舌で転がしている彼女に「それ、お礼」と言って、なるべく冗談めかして言った。


「雨の日に、飴。あ、ここ、笑うところだから」


そうでもしないと、いまここで、彼女に本気の告白をしてしまいそうだったから……。



彼女は、少しぐらいは俺にドキドキしてくれただろうか……?

俺は、とんでもなく、ドキドキした。心臓が身体から飛び出してしまいそうなぐらい、ドキドキしてた。

少し頬を赤らめて瞳をゆるゆると揺らしている仁科さんは、あまりにも可憐だったから……。



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