きみの瞳に、
……あぁ、もうきっと、言ってしまった方が良い。昨日の嘘も、俺の本当の気持ちも。今なら、言ってしまえる気がする。いや、今でないと、言えない気がする。
俺は「あのね、実はさ」と言って、立ち止まった。
それに合わせて仁科さんも立ち止まり、傘を少し傾けて、伺うようにこちらを見上げている。
「昨日、傘を友達に貸したって言うの、あれ、ウソ」
「……え?」
「本当は、持ってたのに、ウソついた。ごめん」
「え、っと、うん、別にいい、よ……?」
簡単に許しの言葉を得られたことに、俺は安堵した。けれど、まだ聞きたいことが残ってる。
「仁科さん、いつも雨の日は、ちょっと嬉しそうに外を眺めてて。仁科さんからは雨はどんな風に見えてるのかなって、ずっと気になってた」
俺がそう言うと、彼女は少し首を傾げて、そして、すぐに頬を赤らめた。
「そんな仁科さんが、ずっと気になってた。でも話しかけられなくて」
俺は正直にそう告げる。
「そう、なんだ? 別にぜんぜん話しかけてくれて、良かったのに」
「うん、そうなんだけど、そうじゃなくて……」