きみの瞳に、

――初めて彼女のことを知ったのは、1年前のちょうど今頃の時季だったと思う。

去年は仁科さんとはクラスが別で、大人しいタイプの彼女の存在を、俺は全くと言って良いほど知らなかった。

忘れた教科書を誰かに借りようと訪れた隣のクラスの教室で、ぼんやりと外を眺める彼女を見かけたのが、初めて彼女の存在を認識したときだった。


雨の降りしきる校庭を、それはとても熱心に、時折少し嬉しそうな、楽しそうな表情をしながら眺める彼女。一体何を見てそんな嬉しそうな顔をしているんだろう……?

俺は少し気になって、校庭へと目を向けた。

外では雨が降っていて、校庭には大きな水たまりがあちこちに出来、降り注ぐ雨が幾つもの波紋を作り出している。


――ただ、それだけだった。



……雨に濡れる校庭が、そんなに嬉しいのか?

いや、そんなわけがない。

だったら、何を、見てるんだろう……?


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