きみの瞳に、

そんな彼女と、次の学年(今の学年)で同じクラスになった。

彼女の名前を知らなかったから、貼り出されたクラス分けの表を見ても彼女が同じクラスだと全く気がつかなかった。だから、教室に入ってみて教室中央付近に彼女が座っていたことに、大げさでなく本当に心臓が止まりかけた。

そして、自分の席を確認して、もっと驚くことになる。だって俺の席が、彼女の席のすぐ前だったから。

――俺は『ながせ』、彼女は『にしな』。

俺と仁科さんの間に誰も挟まらなかったことに、心の底から感謝した。


席は前後だったけど、しばらくの間俺は彼女に一度も声を掛けられないままだった。だって、雨の降っている校庭を見てあんなに嬉しそうな顔なんて、どう捉えれば良い?

もしかすると、雨の日だけ会える彼氏がいる、とか?

それとも、好きな人が雨男、とか……?

俺の貧困すぎる想像力では、彼女の心の中をうかがい知ることは到底出来そうになくて、かと言ってそのことを尋ねてみる勇気も無かった。


< 6 / 20 >

この作品をシェア

pagetop