あの日、雪が降っていてよかった。【完】
『手、はやく。』

「あ、え、えっと…、」

『そんなに震えてたら上手く立てねぇだろーが、』


そう言って

半ば力任せに私を立たせると

特に興味なさそうなトーンで、名前は、と

その人は私に聞いた。


「………い、」

『あぁん?』

「か、香月唯[カヅキ ユイ]、です、」

『何年?』

「い、1年、」


先生に報告でもされるんだろうか、と思いながら

視線を彷徨わせると

なんだよ、とその人は私と目を合わせた。
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