10秒先の狂恋 ~堅物脳外科医と偽りの新婚生活~

 たぶん大和先生は私のことを鬱陶しいと思っている。それは確信に似た思いだった。だから余計に成井家に大和先生が足を踏み入れてくれないのではないだろうか。
 でも、やっぱり私は成井家の両親も大好きだし、大和先生とだって本当はもっと仲良くなりたい。

(これは私のただのワガママなんだろうけどなぁ……)


「大和も結婚でもすれば少しは柔らかくなるんだろうけどね」

 島原先生は突然そんなことを言った。

「相手が不憫ですけど、確かにそうかもしれませんね」
「不憫って……」

 そう言って島原先生は苦笑すると、

「前の病院の看護師で、すっごい美人で、大和の事が大好きな女性がいるんだけど……」
「え……? それは、あの性格を知ってなお、好きでいてくれてるんですか?」
「あはは、そうだね。でもその子、一度アタックしたけどこっぴどく振られたんだ」

 大和先生は、あの顔面偏差値の高さから、時々告白されているのを見かける。
 私ですらその場面に何度か遭遇しているので、実際はもっとたくさんあるだろう。

 しかし、島原先生が言うように、本当にこっぴどく相手を振っているのだ。
 私だったら二度と立ち上がれないくらいに……。
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