10秒先の狂恋 ~堅物脳外科医と偽りの新婚生活~
そう思うといつのまにかボロボロと泣いていて、先生はそれに気づくと、やっと動きを止めてくれた。
「果歩?」
「もう、やだぁあああああ……!」
「泣くことじゃないでしょ? そんなに触られるのイヤだった?」
「変なのに。変になるからやめてっていってるのに、なんでやめてくれないのよぉ……!」
エグエグと泣く私を、先生は優しく抱きしめて、それから少し離して私の顔を見ると聞く。
「変になるってどんなふうに……?」
「そんなの自分でもわかんないっ。ゾワゾワするし、身体熱くて、頭も熱くて変なの……! なのに先生、やめてって言ってもやめてくれない!」
私が泣いているにもかかわらず先生は苦笑すると、
「果歩、それって気持ちいいってことだよ」
「違いますっ! 絶対違うもん!」
思わず叫んで否定すると、先生は困ったように笑っている。
私は乱れた服を慌てて整えると、威嚇するように先生を見ていた。