10秒先の狂恋 ~堅物脳外科医と偽りの新婚生活~
15章:暗示の効果
「困ったなぁ」
そう言いながら、先生はまた楽しそうに笑ってる。
大和先生は、さっきから終始ご機嫌だ。
なんなのよ! 私の気持ちはずっとザワザワしていて、そんな笑っていられるような状態じゃない。先生が悪魔にすら見える。
「もう、やっ」
ふるふると首を横に振ると、先生は頭をポンポンと軽く叩き苦笑して言った。
「今日はもうこれ以上しないから」
「今日は、って……」
私が泣きながら見上げても、先生は私の涙を指先で拭って笑ってるだけ。
(これからもしない、って選択肢はないんだ……)
そう思うと、またやけに胸がドキドキと鳴る。先生にさっき触れられたとこ、まだ熱い……。
こんなの知りたくなかった。知っても、どうしていいかわからないから。
教科書にもそんな記述はなかったのに……。