10秒先の狂恋 ~堅物脳外科医と偽りの新婚生活~
「おいしい。……これ、昔も先生にもらって食べたことありますよね?」
「うん」
やっぱりそうだ。状況はよく覚えていないが、先生のくれたこのイチゴ味には覚えがある。
もしこのラムネで先生に懐いたのだとしたら単純すぎるけど、どうなんだろう?
先生は私を見ると、
「その時は、何の味だった?」
「……イチゴ」
「今は?」
「同じ」
そう言うと、先生は嬉しそうに笑う。
「ふふ。もう一個食べる?」
「はい」
私が思わず頷くと、先生は次は自分の口にそれを入れて、次の瞬間、キスをして私の口にラムネを移した。
「っ!」
「これ、甘いな」
先生が目の前でにこりと笑う。私は口の中のラムネが溶けてもずっと、そんな先生のことを驚いて見ていた。