10秒先の狂恋 ~堅物脳外科医と偽りの新婚生活~

「大和先生が……?」
「あんなに親身に誰かのことを心配する大和をはじめて見たから。まぁ……その時は、恋心って言うのとは少し違ったかもしれないけど、あれから、ずっと果歩ちゃんの事、気にはしていたと思うよ」

 あの日。大和先生と話したことすら覚えていない私は恩知らずだろうか。

 悩んでいると、病院長は続ける。

「それに、ここに果歩ちゃんがきてくれてからも、果歩ちゃんの頼み事だけは、絶対断らなかっただろ?」
「それは私が……暗示を……!」
「暗示?」

 病院長が首を傾げた時、ノック音が聞こえて、病院長室の扉が開いた。
 そして、入ってきたのは大和先生だった。

 私は思わず大和先生から目をそらす。

「病院長、少々お時間よろしいですか」
「あぁ」
「果歩ごめん、外して」

 大和先生にそう言われて、私は目線を反らしたまま、「はい。失礼します……」と部屋を後にした。
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