10秒先の狂恋 ~堅物脳外科医と偽りの新婚生活~

「俺の事きちんと信頼して。絶対果歩が嫌だと思うことはしない」
「でも昨日イヤだって言ったけどやめてくれなかった」

 恨みがましく言うと、先生は苦笑する。

「あれは、果歩が本当に嫌だと思ってなかっただろ?」
「嘘だもん! 思ってました!」

 私は思わず怒ったように言った。それを見た先生は笑って、「知らない感覚が怖かっただけでしょ」とキッパリ言う。

 その言葉にどきりとして、言葉に詰まると、次はまたキスをされて、そのまま口内に舌を差し入れられる。

「んんっ……」

 そのままゆっくりと目を瞑ると、少し長くて深いキスのあと、先生はそっと唇を離した。

「キスは多少なりとも知ってたよね。だから怖くなかったんだよ。でも、昨日はなにも知らないことをされたから怖かったんだ」

 先生はまたするりと背中に腕を回し、そのまま服の中に手を差し入れて、ゆっくりと優しく背中を撫でる。

「でも、もう果歩は……少しは知ってるだろ。触れられたら、気持ちいいってこと」

 触られたところからゾワゾワと不思議な感覚が走って、そのあとジンジンと熱を持ってくみたい。
 くすぐったい、でも、ちょっと違う。

(これが気持ちいいってこと?)
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