10秒先の狂恋 ~堅物脳外科医と偽りの新婚生活~

 悩んでいると、先生は私をそのままソファに押し倒す。私は慌てて首を横に振った。

「やっぱり気持ちいいとか、わかんない」
「うん。じゃあもう少ししてみようね」
「やぁっ!」

 なにその特訓方式!
 そう思うのだけど、先生は楽しそうに私の背中や腕や足を触って、それから口づけた。

 そのたびに、ビクンと跳ねる自分の身体が恥ずかしくて泣きそうになる。

「やっぱり昨日と一緒! もう、やっ! やだっ! 無理っ」

 泣きながら首を横に振る私を見て、先生は額にチュ、と軽く口づける。そして、自分のワイシャツのボタンを外す。
 驚いて目を背けた私の手を取って、私の手にも軽く口づけて、自分の胸にそれを持って行くと自分の左胸を触らせた。

「どう? 人の肌って暖かいでしょ?」

 驚いて手を離そうとしたけど、そのぬくもりに手を離せなくなる。先生のぬくもりだ……。

「あったかい」

 なんだか、安心する。
 先生は目を細めて笑うと、頷いた。
< 123 / 333 >

この作品をシェア

pagetop