10秒先の狂恋 ~堅物脳外科医と偽りの新婚生活~

 そのとき、先生の唇が耳に触れる。
 と思ったら、耳に舌を差し入れられた。その熱に、水音に、顔が真っ赤になるのを感じた。

「っ……やぁっ……」
「それは、嫌、じゃないよね。続けるよ?」

 先生は嬉しそうに笑うと、そのまま手をトップスの中に差し入れる。そのまま胸の方にその手が動いた。

「んっ! だ、だめ! なに! なんで⁉」

 先生は、やめてくれなくて、それどころか、一番反応してしまう場所を重点的に弄り始める。
 なんでそんなことされるのかわからない。けど、他を触られることともまた違って、やけに恥ずかしくて、全部全部熱くなる。

「やっ……先生っ……」
「果歩」

 熱っぽい目に捉えられ、次に呼ばれた私の名を聞いて、私は先生を押していた手を、いつの間にか先生の背中に回していた。

「やっ……怖いから……っ、キスしてて……」

 言った瞬間、先生が嬉しそうに笑って、キスをしてくれる。
 そのキスの感覚に酔いしれながら、唇が離れた小さな隙、私は熱い息を吐き出した。
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