10秒先の狂恋 ~堅物脳外科医と偽りの新婚生活~
「……じゃあ、本当に私と大和先生は結婚したってことなんだ」
「今更何言ってるの」
先生が呆れたように笑う。
でも、本当のことだもん。私は今まで暗示で先生と結婚したと思っていたから……。
「私ずっと誤解してました」
「誤解?」
「いや、なんでもありません」
私が首を横に振ると、おかしな果歩だな、と先生は笑って、それから私を抱きしめる。
その腕の中で私は目を瞑った。
「果歩、好きだよ。俺は、果歩と結婚できてよかった」
「私もです」
見上げると先生と目が合う。そうなるともうだめだ。
自然に顔の距離が縮まって、当たり前のように唇が重なる。
「んっ……」
もう何度目かもわからない先生とのキス。
でも、私は……両思いなんだと心から実感してからした初めてのキスだと思っていた。