10秒先の狂恋 ~堅物脳外科医と偽りの新婚生活~
私は思わず島原先生の目を見ると、
「島原先生は……?」
と聞いていた。
「え?」
「島原先生は好きな人とか、結婚したい人っていないんですか?」
だって、大和先生の同期だ。もう結婚しててもおかしくない年齢だし、とくに島原先生は結婚とか早そうな気がしていたから。
少し驚いたような島原先生の目と、目が合う。
(どうしたんだろう……? なんでそんなに驚いてるの?)
私はそれが気になって、島原先生の目をじっと見つめていた。
それから、少しして島原先生は小さく口を開く。
「いるよ」
「へぇ、どんな人ですか? 今度紹介してくださいよ」
私が微笑むと、先生はまっすぐ私の目を捉えた。
「……今、目の前にいる」
そう、はっきり言った島原先生に、私は訳が分からず、ただそこに立ち尽くしていた。