10秒先の狂恋 ~堅物脳外科医と偽りの新婚生活~
18章:再会
―――今、目の前にいる。
ちょっと待って。島原先生の好きな人の話、聞こうとしたんだよね……。
でも、そう言った島原先生はすごく真剣な表情で、とても冗談を言っているようには見えなかった。
「果歩ちゃん、僕はきみのこと」
「島原先生……? あ、あの……ひゃっ!」
島原先生がふいに右手を持ち上げ、私の頬にそっと触れる。
今まで子どもみたいに頭をぽんぽんと軽く叩かれたことは数多くあったけど、こんなことされたことなくて、私の身体がビクリと跳ねた。
島原先生の熱い指先の感触がやけに肌から熱を帯びて伝わってくる。
大和先生と同じ男らしい大きな手なのに、指先は大和先生より少し柔らかだ。
驚いて島原先生を見あげると、島原先生は私の目をまっすぐ見ている。
その目に捉えられると身体が固まったように動かなくなった。