10秒先の狂恋 ~堅物脳外科医と偽りの新婚生活~
「大和とは、うまくいってるんだよね? もう暗示じゃなかったってわかったんだよね?」
「はい」
「……大和とはもう寝た?」
突然そんな質問をされて、私は首を傾げて島原先生を見る。
「ね、寝る? 夜は同じベッドですけど」
寝るときは同じベッドだ。とはいっても、大和先生は深夜の緊急の呼び出しが多くて朝にはいないし、夜は遅くまで起きていることが多いので、一緒に寝ているような実感はあまりない。でも、あれは寝ていると言えるだろう。
そう思って返事をすると、島原先生は「そう……」と呟いただけだった。
島原先生の様子がなんだかおかしいけど……。理由もよくわからなくて私は首を傾げる。
「あ、病院長まだかな。見てきます」
「そうだね」
私が去った後の部屋で、島原先生はまた頭を掻いて、
「僕ももう果歩ちゃんのこと、諦められてると思ってたよ……」
と呟いていたことは、私には知る由もなかった。