10秒先の狂恋 ~堅物脳外科医と偽りの新婚生活~
家に帰る途中にレシピ本を買い込んで、料理で大和先生を驚かせてやろうと、食材もいろいろ買い込む。
先生の好きなもの、もっと聞いておけばよかった。今日帰ってきたら聞いてみよう。
そんなことを考えながらハンバーグを作って、温野菜サラダと、少し時間が余ったので、手作りのキャロットスープも作った。
よくよく考えたら、ニンジン苦手だったら困るなぁ。でも大和先生嫌いなものないって言ってたけど……。
念のため、もう一品作ろうかなと思ったところで、先生の帰ってくる音が聞こえて、私はぱっと顔を上げる。
そして、玄関まで走り寄ると、「おかえりなさい!」と大和先生の顔を見た。
でも、大和先生はなんだかすごく不機嫌で……私は足を引く。
「大和先生? ……ひゃっ!」
靴を脱いですぐそこで、そのまま抱きすくめられる。
いつもと違って腕の力が強くて、優しい抱きしめ方じゃない。
戸惑って大和先生を見上げると、先生は眉を寄せ私の目を怒ったようにまっすぐ見ていた。