10秒先の狂恋 ~堅物脳外科医と偽りの新婚生活~

「果歩ちゃん、大和の目を見て頼んで」
「え?」
「ほら、早く!」

 私が慌てて島原先生を見ると、島原先生は私の背を押す。

(ええい! ままよ!)

 意を決して私は口を開いた。

「でも、よければ……一緒に来てくださいませんか」

 そして、じっと大和先生の目を見る。

(1,2,3,4……)

 心の中でカウントを始めた。

(7,8,9,10!)

 終わって大和先生を見ると、大和先生は私の方をまだじっと見ていた。

「や、大和先生?」
「行く」

 大和先生はきっぱりと言う。それを聞いて、島原先生は嬉しそうに笑った。

「ほら、うまくいった」
「元から私頼りだったんじゃないですかっ」
「ごめんごめん」

 島原先生は、そう言うと私の頭を撫でる。
 いつでも私のことを子ども扱いしているような島原先生にむっとしてその手を払いのけた。
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